01.おひさま  わたしの名前はフリー。黒猫だ。わたしは彼と一緒に住んでいる。彼とい うのは今、わたしを膝に載せて本を読んでいるこいつのことだ。ここはわた しの特等席だ。このぐらいの弾力と温かみがなんともいえない。彼がわたし の背中を撫でる。わたしは素直にそれに甘える。  彼は今、本を読んでいる。青い革のブックカバーで本をカバーしている。 本から垂れ下がるあの茶色いひも。あのしおりをわたしは取りたい。だが、 あれに触ると彼が怒り出す。だからわたしはそれを眺めるだけにとどめてい る。  あくびをする。くちをもぐもぐさせ、瞬きする。窓からおひさまの光が差 し込む。ぽかぽかしていて気持ちがいい。わたしはその適温の光にうっとり する。体が温かい。  ぱたん。音がした方をわたしは瞬時に向く。彼が本を机の上においたよう だ。うーんと彼は背伸びをし、わたしを見た。ニッコリと笑っている。わた しは瞬きしながら彼を見、みゃあと鳴く。彼は嬉しそうな顔をし、わたしの 頭を撫でる。気持ちがいい。  彼の膝の上で寝ようと思っていたが、彼におろされてしまう。彼はどこか 違う部屋に行ってしまった。つまらない。わたしは自分のテリトリーに行き、 皿にもられた食べ物を食べる。彼はいつも猫の絵が描かれた缶詰の中身をこ れに入れる。いったいあの缶詰はなんなのだろうか。以前、こっそりと台所 へ忍び込んでその缶詰を引っ張り出したことがある。開けようと思ったがあ かなかった。どんなにひっかいても投げても、全然あかないのだ。だが、彼 はちょちょいのちょいと開けてしまう。  お腹も満たされたことだし、外にでも行きますか。そう思い、わたしは抜 け道へ向かって歩く。窓を発見。窓へ飛び上がり、そこから外へ出る。ブロ ックの塀の上を歩く。  近くの公園に行く。わたしのお気に入りの場所だ。ここはおひさまの光が よくあたり、ぽかぽかして気持ちがいいのだ。わたしはよくひの当たる所へ 行き、そこに伏せる。  子供達が公園の遊具で遊んでいる。一人がわたしの姿を見つけた。こっち に向かって来る。わたしは虐められる前にその場を離れる。子供は何をしで かすかわからない。わたしは好きじゃない。  公園には子供がいるので違う場所に移動することにした。今度は近くの家 の屋根である。ここは猫のたまり場となっている。今日は珍しいことにわた ししかいない。わたしはそこでのびのびとおひさまにあたり、昼寝した。 猫ちゃん。猫は人間のことを大きな猫だと思っているそうです。不思議な話です。