04.おねむ  今日はぽかぽかいい天気。日のあたるこの部屋でひなたぼっこをするのが わたしの日課。ここが暖かくて気持ちがいい。この部屋はわたしのお気に入 り。それで、たまに彼がここにくるの。脚をなげだし、後ろに手で体重を捧 げ、目をつむってポケーッと日にあたる。そんな彼の膝の上でわたしもポケー と日に当たるのが大好きなのだ。  今日は彼はいない。だけど、ピースがいる。ピースも気持ちよさそうに日 の光を浴びている。なんだか気分よくない。なぜ、鳥なんかと一緒にひなた ぼっこを? しかも、わたしだけ、またはわたしと彼だけの空間だった部屋 なのに鳥がいるなんて。むむむ。  わたしはピースのいるゲージに近寄り。前足をかけ、ぐらぐら揺らす。 「何をなさるの、猫ちゃん」 「だから彼からもらったフリーって名前があるの」 「揺らすのはおやめになっていただけません?」  わたしは素直にやめる。ピースピース鳴かれたら彼に怒られるかもしれな いから。とりあえず細心の注意をはらって鳥をいじめなくては。  わたしはゲージの前にたち、太陽の光を遮る。が、あまり効果はなかった。 わたしよりも高い位置にある太陽はわたしの大きさでは隠しきれない。 「仲良くいたしません? 仲間なのですから」  仲間? わたしは聞き返す。仲間なのかしら。わたしと彼は猫なのに。 「ええ、仲間ですわ。同じ巣に住む、仲間ですわ。人と猫と鳥」 「人? 誰?」人とは一体誰のことを指すのだろうか。 「彼ですわ」  え? とわたしは声をもらす。ピースは嬉しそうに笑う。わたしは目をそ らす。なんだか馬鹿にされた気分だ。 「彼は……大きな猫でしょ?」 「あらま、あなた今までそう思ってきたの? どう見ても猫じゃないでしょ、 彼は」  特別変わった猫だと思っていたのだが……人という生き物なのか。ピース は物知りだな。鳥はやっぱり頭がいいのだろうか。彼が本を読みながら言っ ていた。鳥は頭がいいから人と会話ができるんだって。わたしは鳥以下なの だろうか。わたしとは会話できないのだろうか。 「気持ちの良い天気ですね。わたくしの居た国はもっと暑かったのですが、 太陽は焼けるような日差しをだしていましたわ。ですが、こちらはとても温 暖な気候なのですね」 「国?」  どこか違う世界から来たのだろうか、この鳥は。太陽が焼けるような日差 しを出すのは夏だけだ。春も秋も冬も暑い、そんな世界が存在するのだろう か。 「あら、ご存じなくて? この国以外にもたくさんの国があるのですよ。わ たくしの居た国は年中暑いところでしたわ。でも、色鮮やかな鳥たちがたく さんいてにぎやかな所でしたわよ。こちらのように、人間がみっちりぎっし り暮らしていませんのよ」  難しい話。なんだか眠くなってきた。太陽のせいかしら。それとも、ピー スの話のせいかしら。わたしはあくびをする。 「……そちらでは季節はないの?」 「……季節? 何かしら、それは」  ピースは小首をかしげる。どうやら鳥にも知らないことがあるようだ。な んだかわたしは誇らしく思えた。ふふん。ピースをこれ以上知識でいっぱい にしたくないわ。こっちの世界のことなんて、教えてやらない。わたしはも う一つ、あくびをしてねた。ピースが途中まで騒がしかったが、すぐにおと なしくなった。 「まったくもう。猫ってほんとうに自由気ままね」  アフリカあたりの国の鳥かな、ピースは。フリーは日本で生まれ育ったと思う。