4.あと 「どうしたの、その傷」  腕に連なる傷。リストカット。また増えている。わたしの大事な友達の大事な体。見 るたびに増える、わたしの大事な友達の大事な体を傷つけた跡。わたしはそれを見ると すごく悲しくなる。自分を傷つけなくちゃいけなくなるなんて。わたしは心が痛くて痛 くてたまらなくなる。 「悲しいよ、そんなこと。体、大事にしてよー」  とわたしはそう言って大事な友達に抱きつく。ギュっと。強く。  わたしは人がどうしてリストカットするのかはよく知らない。友達はなんとなくやる とか楽しいとか言う。やめられないとも言う。わたしはその気持ちがよくわからない。 わたしは傷つくのが怖い。痛い思いするのが怖い。腕を切って水につけると死ぬらしい。 だけど、わたしはそんなことできない。腕を切ったらすごく痛そうだから。水なんかに つけたら染みて涙が出るほど苦しいと思う。わたしはそんな風に考えるから、友達の気 持ちがよくわからない。  だけど、だけどわたしは思う。やめさせることはきっとできるって。どうすればやめ るのか、わたしはわからない。だけど、きっとやめることができると思う。だから、わ たしはそれを期待して大事な友達を抱きしめる。あなたは生きている。あなたはわたし にとって大事な存在だよ。そういう思いを込めて、抱きしめている。背中をさすったり、 体に触れたり、腕を組んだり、べったりくっついたり、甘えたりして。わたしはあなた が大好き、わたしはあなたに甘えたい、わたしはあなたに居てほしい。そんな思いを伝 えている。  これで、友達がそのリストカットをやめるかわからない。だけど、何もしないで諦め るのは何もしてないのと同じだと思う。どうにかしようと思い、何かすることに意味が あるんだと思う。昔のわたしの担任の先生も言っていたわ。確かにどんなにしてもよく ならないかもしれない。だけど、それをどうにかしようとする気持ちが大切なんだ。っ て。どうせムリだからしない、という人が一番ダメだって。その話はわたしにとって衝 撃的だった。すること、思うことに意味がある。わたしはその日以来、ムリだから何や ってもダメとは考えないことにした。考えることに意味があるから。  リストカットは自分を傷つけ、血が出ることによって自分が存在していることをかみ しめるためにする。という話をきいたことがある。わたしは悲しいことだと思う。自分 を傷つけることでしか自分の存在を確認することができないから。だからわたしはその 友達に「あなたは存在してますよ」というのを伝えたい。だから、甘えたい。大好きだ と言いたい。  リストカットの理由って色々あると思う。でも、きっとみんな自分に自信がないと思 うんだ。自分を好きになるといいのにね。わたしはそう思う。自分が大好きな人って、 幸せだと思う。 「友達がさ、またリストカットしてた。なんでするんだろうな、そんなこと」  彼のこの言葉を聞くとわたしは落ち着く。彼はリストカットしないし、そしてその考 えに反対だから。そしてその理由もちゃんとしている。 「親が生んでくれた体を傷つけるなんて」  彼の家族はとても仲良し。理想の家族と呼んでもいいと思う。本当に彼はいい家庭で 育ったと思う。だから、そんな風に考えることができるんだと思う。わたしはそんな彼 が大好きで、またあこがれでもある。 「親が生んでくれてここまで育ててくれたから。だからあなたとも出会えたんだね。感 謝しないと。えへ。ありがとう」  彼は照れた顔でそうだなと言ってくれた。 なんだ、最後はノロケで終了ですか。最初と最後のギャップがなんかなー。 リストカット、するのは別にいいと思うよ。だけど、人に見せないでね。胸が痛むから。 うん。自分を大好きになって自分に自信を持つといいと思う。