6.きょうかい  彼と遊びに行くときに教会の前を通った。キレイな教会だった。真っ白で、大きくて。 お話の世界なんかで出てくるような立派な教会。近くのカップルが「こんな所で式を挙 げたいわあ」なんて言っていた。  わたしは彼の横顔を見つめる。まつげが長い。眉毛が濃い。乾いた唇。短い髪。青縁 眼鏡。光る澄んだ眼。少し、不健康そうな顔つき。好き。大好き。全部好き。  白い教会の近くの公園にわたしたちは行った。そんなに広くはなかったが、キレイな 公園だ。たくさんの色の花が丁寧に育てられ、キレイに咲き、雑草は生えておらず、木 木は伸び放題ではなく、きちんと世話されている。ベンチもピカピカだ。白い教会に似 合う公園だ。わたしと彼はそのベンチに座る。背もたれにもたれ、空を見る。いい天気。 幸せ。 「なあ」 「なあに?」 「君もさっきのカップルみたいにあの教会で式を挙げたいと思う?」  急に何をきくんだろう。わたしは考えた。確かに立派な教会だった。けど、わたしは キリスト教ではないし。結婚式ってどこで挙げるものなのかよくわからないし。教会と いうことでのメリット、デメリットもよくわからない。 「うーん、教会で式を挙げたいと強くは思わないかな」  中途半端な答えを言ってしまった。 「君は誰かと結婚したいと思ったこと、ある?」  どう答えようかしら。わたしは悩んだ。ハッキリ言えばいい。だけど彼の目の前でそ うハッキリ言っていいのだろうか。傷ついたりしないだろうか。なんて、自意識過剰な ことを考える。 「将来、したいわ」  濁して答える。結婚。あまり考えたことはない。結婚するならどんな相手がいいのか、 どんな風に過ごすのか、どんなきまりを作ったりするのか、色々考えるのかしら、他の 人は。わたしは彼の顔をのぞき、どうして聞くのときいた。 「ん……いや。君は結婚についてどう思っているのかなって。俺は別に結婚することに 反対はしないけど、最近、離婚率が高いだろ。だから、早まったりなんとなくとか、流 れ的にとかそんな適当な理由で結婚するのはよくないと思うんですよ」  そうね。早く結婚して離婚するカップル、増えているらしいね。 「できちゃった婚とかして子供がいるのに離婚とかするんだろ。それって最低だと思う んですよ。適当に結婚して子供できちゃってやっぱ嫌いだわって言って離婚。子供はい い迷惑」  彼は教会を見つめる。 「教会って神に祈ったり願ったり懺悔したり誓ったりする所だろ。そこで誓いますやら なんやら言っておきながら、別れるなんてさ。結婚式の意味なんてないんじゃない」  わたしも教会を見つめる。 「俺、君と結婚しようと思わないけど、君もだろう」 「そうね。同じね」  お互いに笑った。 なんだ、この話。教会って言ったら結婚式ってイメージがあって。 結婚の話って何したらいいんだろうと思ったら彼がなんか言い出して。 うん。今現在離婚率ってあがっているんですかね? 以前(もう数年も前だけど)けっこう話題になりましたよねー。 結局ハッキリ結婚したくないっていっているじゃん、お互い……。