10.おもい  わたしは大好きです。彼ももちろんそうですが、異性が大好きです。こう言うと昔は 同性から変な目で見られたものです。ですが、今ではみんなもそうだねと言ってくれる ような年頃になってきました。  わたしは小さい頃から男の子が大好きでした。こう書くとなんだか変な感じですね。 恋多き乙女。昔のわたしにぴったりではないでしょうか。必ず好きな人が居ました。そ して「お前の趣味がわからない」と言われるような人を好きになってました。別に、変 な人が好みだというわけではありません。なんとなく好きだったり、顔が好きだったり、 頑張っている姿が好きだったり。その人色々のどこかを好きになっていました。  わたしがはじめてちゃんとした恋……といえるかどうか自信がないですが、そんな恋 をした時の話。わたしはその恋の時、分かっていました。恋する自分に恋をしているこ とを。だけど、やめることができませんでした。酔っていました。恋している自分に。 手に入りそうで入らなかった彼に、どうやったら振り向いてもらえるか、必死で勉強し ました。  そして失敗しました。彼との別れがやってきたのです。わたしは焦りました。ああ、 終わりだ。そう思いました。告白しようと思いました。会って、あって告白しようとは 思ったのです。でもしませんでした。恥ずかしかったからです。怖かったからです。 「ねえ、ちょっと。話があるの」なんて、声をかけられなかったのです。わたしは彼の 後ろ姿をじっと眺めていました。彼に一言言いたいと思いながら、見つめていました。  わたしはメールを使いました。メールでは自分の気持ちはほとんど伝わらないと言い ます。その通りです。伝わりませんでした。  彼はわざわざわたしの家まで来てごめんと言ってくれました。泣きました。悲しかっ たです。はじめて味わう悲しさでした。  失恋はどうして悲しいのでしょうか。わたしは調べたことがあります。理由は自分の 生きる理由を否定されたからとありました。人間の主な目的は子孫を残すことです。そ れに失敗したわけです。つまり、子孫を残すのに失敗。自分の生きる理由を否定された、 となるそうです。  しばらくはズルズル引きずっていました。どうして。どうして。恨みました。でも、 いつしか彼のことは頭の片隅から消えていました。思い出すことを忘れました。新しい 恋をしました。アタックしたら相手にいやがられました。わたしのことを好きだという 人がいました。ラッキーだと思ってアタックしました。冷たくされ、傷つきました。  メールをしました。恋人が欲しかった時期に。彼に中途半端なことを言われました。 わたしは自分のことを話しました。泣きました。彼は好きだと言ってくれました。そし て遊ばれるようになりました。  苦しかった。だから別れました。しばらく悲しく辛く、イヤな気持ちでいっぱいでし た。  そんな気持ちも忘れました。また新しい好きな人ができました。ほとんどの人に秘密 な恋です。相手があたしに少しアタックしたから好きになりました。でも今は相手にし てくれません。落ち込むばかりです。  また好きな人ができました。面白い人です。相手にしてくれるととても嬉しく感じま す。  でも、好きな人だから嬉しいわけじゃないんです。異性に話しかけられるだけで嬉し いんです。ああ、あたしにアクションを起こしてくれた。それだけでいいんです。わた しは優しくされるのに弱いんです。  恋多き乙女。はたして本当にそうでしょうか。わたしは恋をしている自分を見るのが 好きなだけかもしれません。だって恋する乙女はキレイでしょ。キレイになりたいから。 恋をしなかった時間なんて、あったかしら。そう思えるようになってしまいました。 「お前って人間が好きそうだよなあ」  彼が隣りで言いました。わたしはニコリと笑み、大好きと答えます。 「どうしてそんなに人を好きになれるんだ? 俺はイヤなやつはイヤだけど」 「そうねえ。面白いし、優しいし。笑顔を見せると笑顔を返してくれるし。褒めたり手 伝ったりするとすごく嬉しそうな顔するでしょ。そんな顔を見るのが好き。人間観察も いいね。面白い。話していることとか表情とか声のトーンとか」  でもイヤなやつはイヤじゃない? 彼は聞いてきました。 「そうね。いるわ、そんな人。でも、それは悪いところしか見られない人じゃないかな。 いいところをいっぱい見ればきっとイヤな人にならないと思うよ。人の悪いところばか り見ても楽しくないしね。この人のこういう所、いいなあって思えたほうがいいと思う。 悪いところ探して陰口言うより、良いところ探して見習う方が有意義よ」  彼は笑います。君らしい考えだね、と。私も笑います。  人ってよくわからない物ですね。  わたしっていう登場人物の過去を。あの、管理人じゃなくてわたしっていう登場人物ですよー。 誤解はダメですよん。