02:俺だけが知ってる君の一面  俺だけが知ってる君の一面。ハッキリ言ってない。ない。ないのだ。彼女 はいつも笑っている。俺の前だけで? いいや、違う。誰に対してでも笑っ ている。そう、俺の隣りの席の友達にも、前の席の友達にも、誰にでも笑顔。 その笑顔を見せるのは俺だけで十分なのに。  他に、彼女のことは。そうだ。いつも話しかけてくれる。他愛ない話ばか りだけれど、それがまた楽しい。彼女は何に対してもプラス思考で、いい方 にばかり考える。だから、俺のいうことはほとんど否定しない。それで、俺 は彼女と話すとき、とても安心できる。否定されることはないから。  そして、彼女はリアクションがいい。驚くときは「えええ? ほんとうな の?」と目をクリッと見開いてくちを大きく開けてへえ! そうなんだ!  とわかりやすいアクションをする。その姿を見るのが好き。彼女を一つ、驚 かすことができた、知恵を与えることができた、俺は知恵を持っているのを 見せることができた。そういう気持ちがもらえるからだ。  何かしてあげるといつも「嬉しい! ありがとう! ああ、どうしようっ、 嬉しすぎる! ああ、わたしってなんて幸せものなのかしら!」と大げさに 喜んでくれる。その喜んだ姿を見るとまたしてあげようかなと思える。クラ スの女は何かをしてもここまで喜ばない。ありがとうと言ってもそれは棒読 みのようなありがとうばかりだ。ひどいヤツだとありがとうも言わず、けな してくる。彼女のように、素直に喜んでくれればいいのに。  あと、話をよく聞いてくれる。何かを話していると彼女は真剣にきいてく れるのだ。どんなに対した話じゃなくても。俺の意見をハッキリ聞いて、ま た他の意見も聞きだそうとする。それで、同じ考えだったら「わたしもわた しも! だよねえ、そうだよねえ!」と同感してくれる。そこでまた、安心 感。同じ意見の人がいてくれた。そう思える。俺はいつも否定されてばかり いたからこういう人と話すのはほんとうに楽しい。  そして彼女はよく俺を褒めてくれる。ちょっとしたことでもすごいねっと 言うのだ。すごいねの連発じゃない。きちんとどうしてすごいと思ったのか も言ってくれるのだ。そういう考え方があるんだね、思いつかなかった。そ ういうのがあるんだね、へえ! 詳しいね。その字好きだなあ。ちょっと丸 みがあるのがかわいい。いいなあ。すっごーい! 力持ちだねえ。今までも らった褒め言葉は数え切れない。  彼女といるととても気持ちがいいのだ。目を見てしっかり話をきいてくれ て。おもしろいときはおもしろいと言って笑って、驚いたときは驚いた顔を してうっそー! と言って。嬉しいときは最高の笑顔で喜びを伝えてくれて。 ちょっとしたことでも褒めてくれて。俺の意見を尊重してくれて。  あ、わかった。  人を幸せにする話し方を知っている。それが俺だけが知ってる君の一面。  やっぱり男の子と女の子じゃ文体違うね。