22:「えーとね、1時半」 「聞いてくれ」  炎山からオート電話がかかる。ニコニコしている。何か、良いことでもあ ったのだろうか? 炎山がニコニコしていると俺も嬉しくなる。俺もつられ てニコニコになる。 「実はな、休みがとれた」 「おー! 久しぶりじゃん、休み。いやあ、これで炎山と遊べるなあ」  ああ、嬉しい。もう、本当に久しぶり。やっと炎山と遊べるんだ。わあ。 すごく楽しみ。顔がゆるむ。 「で、で、いついつ?」  俺は顔を画面いっぱい近づけて聞く。炎山は開きかけたくちをつぐみ、少 し顔をそらす。え、聞いちゃいけなかったのかな? 俺は少し心配になる。 どうしたんだよ、炎山。あんなに嬉しそうな顔してたのに。 「時間はな、1時半から会える」 「えーとね、1時半」  頭にたたき込む。おお、けっこう早い時間帯。これなら長い時間、遊べそ うだ。俺はウキウキしながら「で、いつ?」ときく。炎山が笑う。そしてす ぐに表情を戻す。この炎山の笑顔。あんまりいいこと言いそうにない。俺は 少し緊張する。 「実はな」  なんだ。言葉が重く感じる。ゴクリと息をのむ。 「来週の水曜日」 「はあ?」  思わず突っ込む。俺はその時学校だ、授業だ、勉強中……じゃなくて睡眠 中だけど。給食食べ終わってのんびりおやすみタイムじゃないか。俺はどん な顔をしたらいいのかわからなくなった。とりあえず笑う。 「そ、そっか。水曜日か。はは、水曜日、かあ」  なんと言えばいんだろう。本当に。言葉が思いつかない。水曜日だから無 理だね? いやだ、久々の休みなのに! 日にち、変えられない? ダメダ メ、オフィシャルネットバトラーだから休みとるので大変なんだから。ああ。 どうしよう。 「ごめん」  しょんぼりした声。画面に映る炎山の顔が悲しそう。ああ、俺っていつも 炎山を悲しませてばかり。 「無理、だよな。平日の昼なんて」  ふと。俺は思った。自分の顎を撫で、炎山と呼びかける。炎山が画面を見 つめる。俺はニッコリと笑ってやる。炎山は小首をかしげる。 「別にさあ。昼から遊ばなくてもいいんじゃない?」  あ。炎山がポカンとくちを開ける。それもそうだな。恥ずかしそうに炎山 が笑う。まったく……どこか抜けているんだから。  誰もしらない。炎山が実はドジなことを。俺だけが知っている。へへん。 ちょっと優越感。  なんだこりゃ。ひどいわ、この文。