25:「むしろ中心だよ」  やけに甘えてくる。そんなに寂しかったのだろうか。まあ、俺がしばらく ほっといていたせいでもあるだろうけど。そんなにくっつかなくても。ちょ っと恥ずかしい。まあ、やっぱりさびしかったんだろうね。だから不機嫌だ ったわけだし。素直じゃない、か。今は素直だけどな。 「家に来て、何する?」  聞いてみる。炎山は小首を傾げ今日は光にお任せコースと言ってフンと笑 った。俺にお任せコースですか。何してもいいんですかねと聞いたらばかと 言って腕をつねられた。ほんの少し痛かった。  急な話だし、一体何をすればいいんだろう。なんでもいいか。いつもそう だったからいつもどおりすればいいわけだし。炎山をチラリと見る。久々だ、 こうやって炎山の肩を並べるのも。  秋原町に着き、俺の家に招待する。ママが居た。ママにただいまと言う。 ママはキッチンから玄関まで来、おかえりと言ってくれる。炎山の姿を見て ニッコリと笑む。 「今からクッキー作るところだったの。炎山クンも召し上がる?」 「はい、いただきます。光の母上のお菓子は本当に美味しくて光がうらやま しいです」  あらやあねえ、とママは嬉しそうに笑う。炎山はおじゃましますと言って 家へ上がる。俺は炎山の手首を掴んで俺の部屋まで連れて行く。 「クッキー楽しみだな」  炎山がニコニコしてる。本当、炎山はお菓子が好きだな。俺は座布団を炎 山に渡す。炎山は座布団を敷き、その上にあぐらをかく。俺もあぐらをかく。 片膝に肘をのせ、頬杖をつく。炎山をじっと見つめる。そんな俺を見た炎山 は表情をなくす。 「どうしてほっといてたんだ」  ああ、幸せな時を。そんな言葉で壊すことができるとは。俺は姿勢を正し、 炎山の目を見つめる。ニコリと笑う。なんといおうか。 「どうして、どうして光はいつも笑ってるんだ。こっちは……こっちはけっ こうさびし……」  くちをつぐみ、そっぽむく。紅潮している。さびしいだなんて恥ずかしく て言えない、なんて思っているのだろうか。素直だったのに。素直じゃない なあ。俺は見つめる。炎山がチロリと俺を見、キリと睨み、すぐに視線をそ らす。 「俺のことなんて、心にないだろ」  またまた。そんなこと言って。 「あるさ」  炎山がそっと顔を向ける。 「むしろ中心だよ」  ニコリと笑う。炎山ははにかみながら笑い、ばかと言う。 「嘘ばっかり」 「ホントだって」  炎山はフンと笑う。俺も炎山の真似をしてフンと笑う。炎山が笑い、俺は そんなのじゃないと言って俺をぺしぺし叩く。 「クッキー、まだかな」  炎山。炎山の心の中心は俺じゃなくてお菓子なのか? 聞こうか迷った。 まあ、ね。クッキーおいしいもんね。アイラブクッキー。01の続き。さかのぼりすぎだ。