穏やかな


 抑えきれない欲というものがあるだろう? そいつは突然やってくる。例 え普通に過ごしていたとしても、急にそんな欲望が現れる。その欲望といっ たらタチが悪い。その欲をはらそうと脳みそはフル回転するんだ。どうやっ てやろうかとな。時には普段思いつかないようなひらめきがあったりする。
 例えば、人をさらうとかな。


 ニホンに用があってニホンに居るからといって、会いたいやつに会えるわ けではない。伊集院炎山。そいつに会うためにニホンに来たわけではないが、 せっかく来たのだから一目、お目にかけてやりたい。
 用もそろそろ片づきそうだ。このままだと伊集院と会わずに帰国になって しまいそうだ。いくら連絡を取り合っているとはいえ、やはり直に会いたい。 そして、直接話し、直接聞き、直接みたい。間接的というのは便利かもしれ ないが、心を満たすのには少し足りないようだ。
 いや。それはオレだけだろうか。オレが満足できないだけだろうか。いい や、まさかな。実物があれなのだ。間接的じゃ物足りなくても当たり前だ。 オレにかぎったことじゃない。
 会いたい。会って、話そう。そして、話を聞いてやろう。そして、目に焼 きつけてやろう。シャーロに帰っても鮮明に思い出せるようにな。
 そう思う日が数日続いた。何度も何度もそういうことを考えるのだから、 もう会いたくて会いたくてたまらない。どうしてくれるのだ、伊集院。これ では一度会わないと帰れないではないか。
 会うだけでいい。会って話すだけでいい。会って触るだけでいい。会って ……。欲はどんどん膨らんでいく。会うだけ? いいや。話さないと。話す だけ? いいや。触らないと。触るだけ? いいや……もっと、もっと楽し いことをしてやろうじゃないか。
 そう思った瞬間、頭の中を何かがかけめぐった。発作的にカラダが動いた。 マントを着用し、手袋をしっかりする。帽子を整え、勢いよく部屋を出る。 待ってろ伊集院。覚悟しておけ。


「炎山さま、本日の仕事はこれで終わりです」

 画面にブルースが現れ、明日の仕事の予定を伝える。炎山はコクリとうな ずき、ブルースに明日のことで色々と用事を言う。
 自分の机の上を片づける。飲みかけのコーヒーを全て喉に流し込む。苦い。 いれてからだいぶ時間が経っているようだ。生ぬるい温度は、コーヒーの苦 みをさらに深めていた。
 席をたち、職場の仲間に帰宅すると告げ、部屋を出た。
 ドアを閉め、廊下を数歩歩く。すると、目の前に人が現れた。緑。この会 社にこんな緑な人間がいただろうか。炎山は足もとから上へと視線をあげて いった。
 ああ、まさかだとは思うが、こんなかっこうをするのはあいつしかいない な。炎山はどうしようか、考えた。

「何か用か、ライカ」
「ああ、大有りだ。伊集院、お前に会いたくして仕方がなかった」

 炎山はライカに背を向け、逆方向に歩きだした。また変な冗談を。どうせ、 気まぐれできただけだ。まったく。いつも変な冗談ばかりいうのだから。
 ズカズカ歩いていると手首を捕まられた。軍人なだけあって、チカラは強 い。振り払おうにも、歯がたたない。

「炎山」

 そう名前を呼ばれ、一瞬チカラが抜けた。刹那、ぐいっと顎をつかまれ、 上へとひかれる。唇に柔らかい感触をおぼえた。離れようにも、圧倒的なチ カラによって逃げることができない。
 このまま貪られてしまったらどうしよう。ここは会社だというのに。職場 の者に見られたら、非難されてしまう。早く、ここから離れたい。炎山は目 をギュッとつむった。

「……どうした」

 唇がはなされる。ライカの顔を見る。

「ここは、会社だ。人が、たくさんいる。そんなところで今のようなことを するのは、いったいどういうことだ。オレをおとしめたいのか」

 ライカがニヤリと笑んだ。炎山は少し、薄気味悪いと思った。

「おとしめる……か。それは、いいかもな。楽しそうだ」
「何を……ら、ライカ……っ!」

 ひょいと担ぎ上げられる。こんなにチカラが強いのか。炎山は驚いた。脚 をジタバタさせるが、なんの抵抗にもなっていない。離せとわめこうにも、 それでは人がやってきてしまう。炎山は抵抗するのをやめる。

「人がたくさんいなければいいのだろう?」
「……ライカ」

 炎山は何も言い返す気になれなかった。

 目隠しするか?どこかよくわからない場所に連れて行かれるとき、そうき かれた。悪趣味だな、と返事をすると無視された。そして、目隠しをされた。 選択肢はもとからなかったのか。
 目隠しをされたまま、どこかへ連れてこられた。ドアの開く音、閉まる音、 そして、鍵をかける音が聞こえた。しばらくどこかわからない場所の中を歩 かされ、目隠しを外された。暗い密室の中央。物がたくさんある。が、暗くて よくわからない。倉庫か資料室か何かだろうか。

「……なあ、伊集院。話を聞いてくれるか」
「目隠しをさせ、こんな所に連れてきて。次はオレの話を聞けというのか」

 ライカは何も答えず、話しはじめた。

「……というわけだ」
「……いや、というわけだと言われても、オレには関係ないだろう。ライカ、 お前が勝手に会いたい会いたいと思って欲を募らせただけだろう。会いたい と思った時に会いに来ればそこまでなることはなかっただろうに」

 頬に、手の感触。ライカの手のひらだ。手袋越しだが、温かさがわかった。

「会いたいと最初に思ったときに、会いにきてほしかったのか」
「誰がそんなことを」

 唇をふさがれる。柔らかい唇を唇全体で感じる。会社での接吻は乾いた唇 だったのに、今はいくらか潤っている。
 軽く開いた唇をゆっくりと左右に動かす。唇をなぞるようなその動きは、 くすぐったく感じた。唇を1、2周すると、下唇を唇ではさむ。ゆっくりと はむはむする。カラダ中が一瞬ゾクッとした。唇がライカの唾液によって湿 る。
 どうしてこんなに穏やかなキスをするのだろう。先ほどの乱暴な行動との ギャップがたまらない。普通にするのよりも、乱暴を受けた後の方がよりい っそう優しいキスと感じられるのかもしれない。
 だいぶ唇が湿ってきた。一方的に唇の愛撫をうけてばかりいたので、自分 もライカの唇を唇ではさむ。ライカのように上手にできるか自信はなかった が、自分の受けた気持ちよさをライカにも味わってもらいたいと思った。… …というよりも、自分もライカの唇を愛撫したいと思ったのかもしれない。
 何度も何度も唇で唇をはさむとライカの唇が湿ってきた。粘着性のある音 も聞こえてきた。密室で静かなだけあって、その音はよく聞こえた。興奮を 誘う音だ。その音が聞こえるだけで、顔や、耳が火照ってくるのがわかった。
 ライカが舌をだし、オレの唇を舐める。胸がバクリと激しく鼓動した。ゆ っくりと丁寧に、舐める。丹念に丹念に舌で唇をなぞるとくちゃりといやら しい音が何度もした。舌の柔らかい感触は唇を刺激し、脳に快感を伝える。
 ゆるく開いた唇の間から舌が入ってくる。歯列を容易にこじあけ、舌を絡 めてくる。声と共に熱い吐息がもれる。カラダが震えている。下腹部が、ビ クンと反応している。急に恥ずかしくなり、顔をそらそうと思った。が、顎 をぐいとひっぱられ、さらに舌を奥深くいれられる。
 舌の上を這い、左右、上下に擦る。舌を絡ませ、舌の先で口内の粘膜を刺 激する。唾液が口角から漏れ、皮膚へと流れる。粘り気を帯びた音が何度も 何度も鼓膜を打つ。息は荒くなる一方で、無意識にライカの腕を掴んでいた。
 ライカのキスは好きだ。キス一つでこんなにも感じることができる。頭の 中は真っ白で、ただひたすら口内を貪られる快感をあじわう。恥ずかしいと いう感情が層一層興奮を誘う。くちゃりという音を聞くと酔ってしまいそう になるほど、頭がぼんやりする。とろけてしまいそう。この表現が、ぴった りだと思う。
 こんな気持ちのいいキスを自分は独り占めしている。こんなに気持ちのい いライカのキスを知っているのは自分だけである。そう思うと、自分は格別 だと思える。だからといって、それを誰かに自慢することはできない。いや、 許されない。
 二人だけの秘密。この言葉がどんなに二人を燃えあがらせるか。考えなく とも分かる。
 ライカの舌の動きが急に激しくなった。その動きを敏感に感じ取った感覚 神経はただちに脳にその刺激を伝える。喉から声が漏れ、心臓は激しく血液 を送り出す。ライカにしがみついていないと倒れそうになる。
 ライカの熱い吐息。ライカの唾液。ライカの舌。それら全てがオレをとろ けさせる。なんともいえないこの快感は、ライカじゃないとあじわえない。
 唇が離される。お互いの唇が唾液の糸で繋がる。ライカがぺろりと舌で唇 を舐める。そのしぐさを見るとさらに心臓がバクリと言った。
 ライカが顔を近づけ、唇からこぼれた唾液を舌で舐める。思わず声が漏れ る。舌先で舐められ、下腹部がビクビクする。それが固くなっていくのがわ かった。キスだけでこんなになっているのを、ライカに見られたくないと思 う反面、見られたいとも思う、矛盾している自分がいた。
 ライカが顔を離し、ニヤリと笑む。一瞬からだが硬直する。手袋を脱ぎ捨 て、優しく唇を重ねてくる。そして、服の下から手を入れた。ライカの指は すーっと腹の上をなぞる。撫でるように指の腹でゆっくりと這う。そして、 その指は胸の方へと上っていく。ライカが胸の突起物をつかんだ瞬間、声が 出る。
 ライカは身をかがめ、服をまくしあげる。そして、顔を近づけ、胸にキス を落とす。舌で舐め、胸の上を這う。体中がゾクゾクとした。ライカの唾液 がくちゃりとなる。舌は胸の突起に到達し、舌でまわりを舐める。キスとは また違った快感が、オレを酔わせる。頭がふらふらして、倒れそうだ。
 乳輪をたんねんに舐め、先端をくちに含む。口内で舌を絡まされ、転がさ れる。ライカの湿った、熱いくちの中での愛撫は、たまらない気持ちよさで、 脚がガタガタ震えた。乳首を吸われた時には、勢いよく吸った息が声ととも に喉を通り、忙しい呼吸を誘った。自分のちからで立っているのがつらくな り、ライカの頭を抱きしめた。

「そんなに、気持ちいいか?」

 ライカが顔を胸からはなし、顔を近づけてくる。間近で見たライカの顔は 紅潮している。オレはライカの頬に触れた。熱い。熱いけれども、オレの顔 の熱さと比べたら、まだまだ冷たい方かもしれない。ライカは唇を重ねてき た。自分の唾液を押しだすように、オレに唾液を送る。唇から唾液があふれ でる。
 ライカは顔を離すとまた乳首への愛撫を再開させる。わざと音をたて、唾 液まみれになるように舐め回す。そして、集中的に吸い付いてくる。ぎゅっ、 とライカの頭を抱きしめる。どうして、どうしてこんなに気持ちがいいのか。
 下腹部が熱い。痛い。ビクンビクンと震えているのがわかる。胸だけでな く、ここも愛撫してもらえたら、どんなに気持ちがいいだろう。そう思いは じめた。

「ライカ……」

 ライカは胸から顔をはなし、首筋にキスをおとす。いざ、言おうとすると 恥ずかしくて言葉がのどでつかえた。無意識に手が下腹部へのびる。それに 指があたる。固くなっており、思ったよりも熱い。ズボンごしから、先端を 擦る。

「は……ぁっ……あ……」

 ライカは唇にキスをすると、しゃがみこんだ。オレの手首をつかみ、ベル トのバックルを外す。ファスナーをおろし、大きくなったそれを取りだす。

「炎山……熱くなってる……」

 ライカは先端を舌でぺろりと舐めた。たまらない刺激が体中をかけめぐる。 思わず、大きな声が出、反り返ってしまう。
 ライカのそこへの愛撫を待つが、ライカは根本を持ったまま、何もしない。 もどかしく思い、ライカの指に触れる。ライカはニヤリと笑み、オレを見あ げる。

「何? どうしてほしいんだ?」

 そう言うとライカは先端をくちに含み、くちゅりと音をたてて舌でまわり を舐めた。熱く、柔らかい舌の感触ががたまらなく気持ちがいいというのに、ライカ はすぐにくちをはなしてしまう。ライカの唇と自分の先端が唾液の糸で繋が る。
 心臓が、バクリと言う。
 してほしい。ライカのくちで、ライカのくちで気持ちよくしてほしい。い きたい。もっと、もっと快感を味わいたい。ライカに貪ってもらいたい。抑 えきれない欲がカラダの底からわき上がってくる。

「……はっ……ラ……イカ、な……舐めてっ……」
「どうして?」
「気持ちよく、なりった……いっ……」
「自分の手ですればいいんじゃないか? いつもやっているのだろう?」

 ライカはそう言うとオレの手を掴み、握らせた。今にも張り裂けそうなほ ど膨らんでいる。ライカに舐められた先端は、ぬめりとしていて、からだが 震えた。
 このまま放置状態だなんて、嫌だ。ライカを前に、手が自然と動く。

「はっ……ああっ……ラ……ライカっ……ライカッ……」
「何?」
「ライカの……ライカのくちで……ライカのくちでいか……て」
「聞こえないな」

 ギュッとライカが根本を握る。体中に電撃が流れたような刺激が走り、ラ イカにしがみつく。荒い呼吸を整えることが、できない。

「ライカのっんんっ! ラ、ラ、ライカのくちで……いかせぇてっ」

 欲とはおそろしいものだ。恥ずかしくて、普段絶対に言えないようなこと を、求める刺激のためだけに言える。恥じらいがないわけではない。しかし、 その恥じらいは興奮を促す。
 ライカはそっとそれをくちに含んだ。先端を舐め、舌で這う。くちをはな し、側面を舌で這う。先走り液がライカの頬につく。
 先端にキスをし、もう一度くわえる。舌で扱き、くちの奥までそれを含め る。ライカの口内の柔らかい粘膜に刺激され、腰が自然と動く。
 ライカはゆっくりと抜き差しする。粘膜、舌と擦れ、唾液まみれになり、 粘着性の音をたてる。心臓ははりさけそうになるほど、力強く血液を押し出 す。

「はぁっはぁあっあっあっライ、らいかぁっ……!」

 運動をはやめ、先端を吸う。自分の分身がドクンとする。いやらしい音を たて、自分のそれを吸うライカを見ていると何がなんだかわからなくなって きた。脚はガタガタと震え、腰は自然に動き、心臓は激しくはたらく。腕は ライカを強く抱きしめ、手はライカの服を強く握る。目には涙がたまり、閉 じることのできない唇からは自分とライカの混じった唾液がたれる。からだ 中から汗が噴き出、皮膚を伝う。

「だ……だめっあっはぁあ、ライカ、だ、だめっ」

 でる。体中が震える。バクバクと鳴る心臓の音、粘り気のある音、忙しい 呼吸の音。聞こえるのはそれだけだが、場を高まらせるには申し分ない。も う、我慢できない。オレは慌ててライカの顔を押さえ、自分のそれを引き抜 いた。刹那、先端から勢いよく白濁の粘液がとびだした。ビクンビクンと分 身は震え、天を突きあげるようにそそりたつ。
 肩で息をし、どうにか呼吸を整えようとする。ライカの顔をのぞく。ライ カはふっと笑った。

「くちの中で出しても、よかったのに」

 そう言うとライカは唇についた精液をぺろりと舐め、手についた精液を丹 念にくちの中に含めて拭った。ライカの手が唾液によってなまめかしく光る。
 ライカはもう一度分身をくわえると優しくくちの中で吸飲し、それをキレ イにした。がくがくと体中が震え、腰がぬけそうだった。

「ほら……楽にしろ」

 その言葉が鼓膜を打つと、糸を切られたようにオレはライカに寄りかかり、 座り込んだ。自分の脚で立つことができない。ぎゅっとライカを抱きしめ、 泣いてるような声で呼吸をする。
 ライカの細い髪が顔をくすぐる。ライカがぎゅっと抱きしめてくる。ライ カが肩に顔を埋め、息をする。ライカの熱い吐息を肩で感じる。

「気持ちよかったか」
「ん……」
「そうか。よかった」

 耳元できこえるライカの声は、くすぐったく思えた。

「ライカ」

 耳元にくちを寄せる。

「幸せ」

 そう言うとライカは力強くオレを抱きしめてくれた。
 密室できこえるのは二人の忙しい息づかい。そして、お互いの動悸。
 床に目をやれば先ほど放った白濁の液体が目に入る。

「すごく幸せ」

 瞼がとろんと落ちてきた。
 そしてお互い、貪るようなキスを繰り返した。


どこが拉致っぽいのか不明ですが……これが裏拉致版でした。
楽しかったです。が、まだまだ未熟だなと思いました。
最高に燃え上がれるようなえっちなシーンがかければいいですね……!
胸への愛撫が難しかったです。


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