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01.「怒らないから言ってみなさい」 「なあ、炎山。どうしてそんなに不機嫌そうなんだ?」 何か理由があるなら言えよ。そう言ってみるが、炎山はそっぽ向いたまま で何も答えてくれない。くちを固くつぐんでいる。まったく。どうして炎山 は素直じゃないんだ? 俺は溜息をつく。 「……光、自分の行動を振り返ってみろ」 やっと口を開けたかと思えば意味深な言葉。俺に考えろというのか。考え るのは苦手だというのに。炎山は指令席に座り、画面をじっと見つめる。数 字に英語にグラフに……画面いっぱいに様々な情報が映し出されている。一 日中こんな物ばかり見て、炎山はどう思うのだろうか。おもしろいだとか思 うのだろうか。俺も画面をじっと睨む。 「おい」 炎山は俺を呼ぶ。炎山を見てなんだよときく。炎山は俺を上目遣いで見つ めてくる。沈黙。どちらもくちを開かない。まったくもう……呼びかけたの なら何か一言でもいいから言えよ。俺は炎山から顔をそらし、頭をかく。キ レイな顔しやがって。上目遣いで見てくるなよ。何を言えばいいか思いつか ないじゃないか。 「……光」 「だからなんだよ」 炎山が見つめてくる。俺はその視線に気づいていないフリをする。が、気 まずくなったので炎山の顔を見た。目が合う。炎山は少々顔を下げ、視線を そらす。本当、世話のかかるやつだ。指令席越しから炎山の頭をぐしゃぐし ゃに撫でまわし、俺は炎山の隣に移動する。 「なんだよー、ハッキリ言えよ」 チラリと俺を見る。すぐに視線をもどし、唇をゆるめて息を吐く。画面い っぱいに広がるグラフを睨み、PETの中のブルースに指示を出す。ブルー スはネット上に転送される。 「光、ロックマンを秋原エリア3に送ってくれ」 「あいよ、指令だな」 俺はPETを取りだし、ロックマンをネット上に転送する。PETを指令 席におく。カタンと音がなる。どおんぐおんという機械の動く音がよく聞こ える。静かな所じゃない、ここは。 炎山の頭を見つめる。白い。キレイ。つやのある潤った髪。毎日忙しいだ ろうにどうしてこんなに手入れが行き届いているのだろうか。それともただ 単に手入れが行き届いているように見えてしまうほど元がいいだけだろうか。 そっと俺は炎山の髪にふれてみた。サラサラしている。ほそくて、だけどし っかりしている。光を反射してキラキラしている。頭に顔を近づける。 「……光」 「何? ゾクゾクする? こういうの俺、たまらなくダメなんだとか? あ、 もしかして今の炎山の弱点だったり?」 ニヤリと笑って言ってやる。炎山はフンッと鼻で笑う。そうそう。それが いつもの炎山さ。 「炎山はさあ、頑張りすぎだよ。もっと素直になればいいのにさ」 「頑張りすぎと素直は関係ないんじゃないか?」 「はは、そうだな」 せまくて、うるさくて、あかるくて、文字だらけで、ひとりで。こんな部 屋に一日中居るなんて、大変だろう。きっと、さびしいだろう。母さんにも 父さんにもなかなか会えないだろうし、家にも帰れない。素直に自分の気持 ちを言える相手が居ないのではないだろうか。俺以外。 「怒らないから言ってみなさい」 笑って炎山に言ってやる。炎山は俺を見てハッとした顔をする。うつむき、 フンッと笑う。笑う顔をちゃんと見せてくれたらいいのに。キレイな顔で笑 っているんだろう。俺だけには特別に見せてくれてもいいんじゃない。 「不機嫌な理由を本人に話してもらうのはどうかと思うが?」 笑ってやった。大きくくち開いて自慢の白い歯を見せて、前が見えないぐ らいに目を細めて。炎山もフフンと笑っている。まったく。全部俺が悪いで す、炎山。答えは会う前から分かっていた。なぜならそれが理由でここまで きたんだから。 「しばらくほっといてて悪かった。ごめん。俺が居なくてさびしかっただろ」 「自惚れか」 「ああ、そうさ。自惚れさ。炎山は俺が居ないとダメだって思えるぐらいの 自惚れさ」 大げさだな、と炎山は笑った。 「さびしがりやの炎山クン。俺は超能力者だから炎山の心、透視できるんだ ぜ。だから透視するぞ?」 「ほう。興味あるな。やってみろ、光」 炎山の許可を得たので俺は炎山が座っている指令席の背もたれをつかみ、 自分の方に向ける。炎山の両肩をつかみ、さっと顔を近づける。俺はへへへ と笑い、炎山はフンッと上目遣いで笑う。両手を炎山のひたいにおく。親指 で前髪を分け、ひたいとひたいを合わせる。目をつむる。 「はい、透視完了」 ひたいを離し、目を開ける。にへにへと笑う。「お客様、一万ゼニーにな ります」言ってみたが、無視されて結果はどうか聞かれた。もう一度言って みたがもう一度結果をきかれた。俺は苦笑いする。 「ほっとかれてさびしかったからから、これから光の家に上がりこんでやる」 きょとんとした顔で炎山は俺を見あげる。そして「ばか」と言って笑った。 俺も釣られて笑う。その通り。俺はばかだ。だから、俺は炎山の心が透視で きたんだ。なんてな。 「あたりだ。怒るか? 急に上がりこむのは」 いつも急に来ているのに。改まってそう言う炎山がなんだかおかしい。俺 はクスリと笑い、にまっと歯を見せて笑む。 「怒るわけないじゃん。来てくれる方がうれしい」 炎山がフンと笑う。 「……素直になれる。光と居ると」 炎山が笑う。俺の顔を見て。やっぱり俺の予想どおりだ。キレイな顔をし て笑っている。 ちょっと無駄にテーブルを頑張っている(笑)もう少し機械とかそういう器 機の描写が上手になれば指令室をイキイキと書けそうですね。 おでこネタ、けっこう好きなのですが、みなさんはどうでしょうか。 おでことおでこをくっつけたり、触ったり。おでこってけっこう好きです。 |
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