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治癒させないクスリ
「ジャスミン」 炎山にそう呼ばれた。ドキリと胸が跳ね上がる。炎山の声が好き。その好 きな声で自分の名前を呼ばれたのだから、心臓の鼓動は激しく音をたてて速 くなる。 「何? 炎山」
ちょっと来てくれと手招きされる。あたしは炎山のところへ行き、小首を
かしげて炎山を見た。炎山はさっと手をのばし、あたしの額に触れる。急な
ことなので硬直してしまう。 「やっぱりな。熱があるようだ」 それはそうだ。炎山に触られたのだから熱ぐらいでる。炎山は手をはなし じっとあたしを見つめてくる。あたしは恥ずかしくて目をそらす。
「ジャスミンは漢方作りの名人だろ? 風邪薬、作れないのか?」 あ。怒ってしまった。せっかく心配してくれたというに。分かっているけ ど、一度怒ってしまったからなかなか簡単に落ち着くことができない。
「炎山!」 急な怒声に炎山は驚き、おろおろしている。もう、やけくそだ。あたしは 炎山の顔にぐいっと自分の顔を近づける。 「な、なんなんだ。悪かった、ひどいこと言ってわる」
炎山の口止めとして頬に接吻を落とす。柔らかい。男の子なのに、こんな
柔肌なのか。あたしより柔らかいのだろうか。それはなんだかにくい。そし
て、うらやましい。 「……アハ。心配しテくれテありがとネー」
にかりと笑い、顔の近くで手を小刻みに振る。あたしは逃げるようにその
場から逃げる。 「あらー? ジャスミン、顔が真っ赤よ? 熱、悪化したの?」 メディが顔をのぞきこんできた。あたしはにかりと笑って、答えた。 「是、悪化しタヨ」
どうりで赤いと思った。そう言ってメディは笑った。 |
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