1.でんせん
雨の日だ。今日は。そして、夕方だ。今、冬で辺りはもうすっかり真っ暗 になっている。雨だということもあって、さらに町は暗い。電灯や窓からこ ぼれる光が雨粒により反射してキラキラと輝いて見える。 わたしは彼の家にいる。二人きり。静かに流れている。二人がいる部屋だ け電気をつけている。だから、他の部屋は真っ暗だ。 雨が窓をたたく。わたしたちと一緒に過ごしたいのかしら。雨が地面に落 ちる。あんなに高い所から落ちて、痛くないのかしら。静かな部屋には雨の 声が大きくきこえる。 こんな静かな雨の日を二人で過ごす。こんなにのんびり過ごすことが、わ たしにとってどんなに幸せなことか。こんなのんびりとして、落ち着く気持 ち、久しぶり。 窓から雨の会話をきくのをやめ、彼の隣りに座る。彼の肩に頭をのせて、 和んでみる。ああ、幸せ。本当に幸せ。彼がわたしの髪を撫でる。優しく、 柔らかい大きな手。わたしはこの手が大好きだ。 「あ、そうだ」彼はそう言って立ちあがる。ちょっと待っテてと笑顔で言 うと他の部屋に行ってしまった。なんだろう? わたしは胸をはずませる。 楽しみだわ! 彼のことだから、きっとステキなことを考えているんだわ。 わたしは期待を胸に、にやけながら彼が戻ってくるのを待つ。 数分経つと彼が「おまたせー」と言って戻ってきた。手にはロウソクを数 本とチャッカマン。何をするんだろうとわたしは目を輝かせ、彼の手の動き を見つめる。細い指がしなやかに動く。その動きに、胸がドキリとする。 彼はロウソクを机の真ん中に置き、チャッカマンの火を近づける。ポッと ロウソクに火がつく。ひらひらと閃くロウソクの火。ああ、キレイ。とても キレイ。揺れる火を見ると、落ち着く。頼りなさ気なほんとうにちっぽけな 炎だけど、なんだか守られているような気持ちになる。 パチッという音と共に部屋の電気が消える。彼が隣りに座り「いいね、火」 と言ってロウソクをのぞきこむ。静かに、じわじわと燃えていくロウソク。 ずっとこうしていたい。わたしは彼にもたれかかる。彼はわたしの肩を抱く。 雨の音なんか聞こえない。わたしと彼だけの世界。 ものすごい速さで走る電閃。ピカリと鋭くひらめき、ロウソクとわたした ちだけの世界にまぶしい光を与える。そしてすぐに暗くなり、ゴロゴロと唸 る。ビックリした。急に部屋中が明るくなるんですもの。近くに落ちたのか しら? 怖いな。そう思って彼の腕をギュッと抱きしめる。彼は強くわたし を抱きしめる。
「ち、近くに落ちたのかな」
ちょっと見てみる。そう言ってわたしは窓へより、開ける。雨の音が強く
なる。風が部屋の中に吹き込む。スカートが閃く。パラパラと物にあたり、
はねる雨の音。その中を電閃し、唸った。なんだか、不思議。こんなに静か
なのに、急に光ってゴロゴロ言うんだもの。おもしろい。
「はは、すごかったよねえ、今の! 感動しちゃった」 わたしは彼の胸にとびこみ、ギューと背中をだきしめる。
「守ってね、わたしのことを」 そう言って彼もわたしを抱きしめてくれた。素直じゃないんだから。
電閃 稲妻が閃くこと。 閃く 一瞬するどく光る ひらひらすること 瞬間的にあることが脳裏をかすめる 電閃より伝染の方が書きやすかったかな。わたしの気持ちがあなたに伝染☆みたいな |
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