05:「いいじゃん」
   「絶対だめ」



「ねえ、どうしていっつも伊集院クンと一緒にいるの?」

 幼なじみのメイルが急に変なことをきいてきた。別に、いっつも居るわけ じゃない。おたがいにどうにか時間を作って会っているのだ。いっつも一緒 にいたくてもいれないのだ。俺といっつも一緒にいるのは炎山ではなく、ロ ックマンだ。

「なんで?」

 そんな変なことをきく理由を知りたい。俺はメイルを見つめる。メイルは たじろき、顔をキョロキョロさせる。動揺どうようしているのか。

「その、最近、熱斗のことあまり見かけないから。見かけても伊集院クンと 一緒で……」

 そうだろうか。学校が一緒だからいつも見かけていると思うが。見かけて も炎山と一緒の方が少ないと思う。ほんの少しそうだったから勝手に話を膨 らましてしまっているとかか。そんなことないと否定しても「そうかなあ」 といぶかしげな目で返してくる。本人が言っているのをそんな風に否定するなよ。 わざわざ聞いておいて否定するなら聞いた意味がないじゃないか。

「なに、俺が炎山と一緒にいたらダメなわけ?」

 メイルは目をしばたたかし、俺の顔をのぞきこむ。刹那せつな、両手でじぶんの顔をつ つみ、うつむく。耳が赤い。「いや、その、あの……」と意味をもっていな い言葉をくちから地面に落としている。

 バッと顔をあげ、俺の顔を見つめる。 くちびるはキュッとへの字に結ばれ、まゆはつりあがり、目がまんまるとし ている。何かを決意したかのような顔。ふっと驚いた顔になり、下を向きな がらモジモジしはじめる。

「そ、そういうワケじゃないよ。た、ただね、気になっただけなの……」

 だから、今の話、気にしないでね。そう言ってメイルははにかみながら笑 う。ああ、もうそろそろ行かないと待ち合わせの時間を過ぎてしまう。早く 切りあげてもらいたいな。そう思いながら空を見あげる。天気は快晴。こん ないい天気にはいいことがありそうだ。

「ねえ。今から、どこか遊びに行こうよ。たまには二人でどう? いつもデ カオ君ややいとちゃんとばっかりだったから。ね? いいよね?」

 どうやら快晴の日はいいことではなくよくないことがあるそうだ。今から 遊びに行こうだなんて急すぎる話だ。俺はこれから炎山と会う約束をしてい るというのに。

 無理だと伝えたら「どうして?」と聞いてきた。用事があると言うと「伊 集院クンと?」とまた聞いてくる。別に誤魔化ごまかす理由もないの で俺はその通りだよと答えてやる。メイルはブスッとほほふくらませた。

「ほらーやっぱり伊集院クンばっかりと遊んでる。たまにはわたしと遊んで よ」

 そう言ってメイルは俺の腕をつかむ。手をどかそうとしたが、逆に強くつ かまれてしまった。俺は溜息ためいきをつく。空をあおぎ、くちを適当に開いて答える。

「別に今日じゃなくてもいいじゃん」

「ダメ」

 メイルは俺の体をひきよせる。そして、ギッと俺の目を見つめる。怖い。 これが女の底力などと呼ばれるものだろうか。

「いいじゃん」

「絶対だめ」

 はあ、と息を深く吐く。この目とこの態度のときのメイルは何を言っても ひかない。仕方がない。俺の負けだよ、メイル。今回は炎山との約束はキャ ンセルだな……。ごめんよ、炎山。俺はロックマンにブルースに連絡してお くよう頼んだ。

 あーあ、せっかく約束がとれたのに。炎山の仕打ちが怖い。何か対策を考 えておかなければ。あと、メイルへの仕返しもな。

「なあ、メイル」

「何? 熱斗」

 ニッコリとほほえむメイル。もう一度、頼んでみようか。俺は息をのみ、 再チャレンジする。

「明日じゃダメ?」

「うん」あっさり言われてしまった。

「いいじゃん」

「絶対だめ」

 メイルじゃなくて炎山だったらやっぱりそう答えるだろうな。でも、相手 が炎山だったらこんなお願いしないだろうな。


けっこう書き改める点が多かったですね……。セリフが続くところって難しいですね……。 セリフだけは確かに楽ですが……。瞬く(しばたたく) しきりに瞬きをすること。ボキャブラリーが一個増えた。
 
     


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お題提供→セリフ30































ガーベラだそうです。
キク科の多年草。南アフリカ原産。
葉は根際から放射状に出る。
明治末年に渡来。名はドイツの博物学者ゲルバーT. Gerberにちなむ。
色は赤・白・桃・黄色などで季節は夏。